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茶縞染織/糸紡ぎ・茶染め・手織り

綿素材の緑茶染め(お茶染め):常温編

2023.08.08 2023.08.09

前回の烏龍茶でコットン(綿)を染色に続いて、のむらの茶園野村産業株式会社 様より、製茶レーンから外れてしまった廃棄処分の緑茶(煎茶、日本茶)の茶葉をご提供いただきました。
緑鮮やかで香りも高く、とてもフレッシュな坂東市産のさしま茶です。

この新鮮さが失われないうちに、さっそく染色実験に取りかかりました。緑茶染め精練、濃染、媒染、染める繊維の種類、染色の過程は、烏龍茶での染色とほぼ同じです。

今回もすべて綿100%の繊維で、

を合わせて400g分準備、染料は繊維の50%とするため茶葉200gを使いました。

実験内容

濃染処理

  1. 成分無調整豆乳1:水1として、20(濃染液):1(繊維)で6時間浸す
  2. しっかり脱水した後、天日干しをする

染液作り

  1. 水2リットルを沸騰させてから、茶葉全量を投入後、5分煮出す
  2. 不織布で茶葉を濾して、緑茶液(染液)のみを別鍋に保存
  3. 5番液までとったところで浴比が20(染液):1(繊維)の8リットルになったので煮出し完了
  4. 染液を常温(40℃以下)程度になるまで冷ます

※染液のpH値をみたら、pH7くらいの中性でした。綿素材の緑茶染め(お茶染め):常温編

染色

  1. 浴比は 20(染液):1(繊維)にする
  2. 染める繊維を水に浸して、十分に浸潤させてから良く絞って広げておく
  3. 染液に繊維各種を投入し、最初の5分は繊維をしっかり揉み込む
  4. 常に染液中に繊維全体が浸っている状態をキープしつつ、時々撹拌しながら染める
  5. 30分経過したら繊維を取りだして染液を絞り、軽く水洗いをする

緑茶染め

媒染

  • アルミ媒染(焼きみょうばん):繊維量に対して10%
  • 銅媒染(酢酸銅):繊維量に対して10%
  • 鉄媒染(酢酸鉄):繊維量に対して5%

※染液に含まれるタンニンと媒染液が反応した際、皮膚のタンパク質が反応して色素が沈着してしまいます。必ずビニール手袋をして作業してください。

  1. 浴比は 20(媒染液):1(繊維)で、媒染時間は15分
  2. 媒染液から取り出したら、水に色が出なくなるまでしっかり水洗いをする
  3. 銅媒染と鉄媒染の繊維を脱水して日陰干しをする

緑茶染め:媒染

2度染め

アルミ媒染だけ、もう一度染液に浸けて2度染めをします。

  1. アルミ媒染液から取り出した繊維を水洗いしてからしっかり絞り、元の染液に入れて最初と同じように5分揉み込む(乾燥の工程は無し)
  2. その後は常に染液中に繊維全体が浸っている状態をキープしつつ、時々撹拌する
  3. 30分経過したら繊維を取りだして染液を絞り、軽く水洗いをする
  4. 繊維を脱水して日陰干しをする

以前行った2度染めの実験で、鉄媒染と銅媒染をしたあとに2度染めをすると色がくすんでしまい、アルミ媒染では逆に媒染液につけると色が薄くなってしまうことがわかりました。
そのため、今回もアルミ媒染をした繊維のみ2度染めをしています。

染色結果

左から、アルミ媒染、銅媒染、鉄媒染です。緑茶染めの布と糸

アルミ媒染

写真では淡い色合いになってしまいましたが、わずかに緑味を感じるレモンイエローです。
いままでのアルミ媒染では出せなかった明るい黄色になりました。
クエン酸の作用を実験した時にかなり近いです。

欲を言えば、もう少し濃い黄色が欲しかったのですが、今回の実験は「お子さまにも気軽に体験していただけるワークショップ向けの染色」というコンセプトだったので、次の機会に酸度やタンパク濃染を工夫して濃い色にチャレンジしようと思います。

銅媒染

少しくすんだサーモンピンクになりました。
烏龍茶染めのアルミ媒染と似た梅染めに近い色合いですが、こちらはほんのわずか茶色味があるような気がします。
調味期限切れの茶葉を使った銅媒染ではもっと茶色が強かったはずなので、ちょっとビックリする結果でした。

鉄媒染

紫味のある渋めのグレーです。
近い色合いはこれまでも出ましたが、ここまで紫を感じるのは初めてです。
烏龍茶染めの鈍色より華やかなグレーを得ることができました。

常温染めとアップサイクル染色の実現

過去のお茶染めと明らかに違う点は、この2つ。

  • 繊維を染める時の染液の温度
  • 染料となる茶葉の新鮮さ

です。

染液の温度を見極める

お茶のタンニンを濃く出すためには高温で短時間の煮出しが最適です。
その反面、高温の染液で染めようとすると、酸化が進んで赤みが強くなり色がくすんでしまうことがわかっています。
そこで煮出した染液をいったん冷まして、染液に手を入れても大丈夫な適温にすることで繊維を直接手で揉み込むことができ、より色素が繊維に浸透したのでは無いかと思います。

新鮮な茶葉の入手

お茶染めを小紋屋のライフワークにしようと決めた時、地元の銘産品である「さしま茶」を使おうと思い立ちました。
そして、過去に廃棄品や賞味期限切れの処分製品をご提供いただけないかと関係各所に提案をしていたのですが、私の力不足でなかなか実現には至らず…。

時が過ぎ、SDGsであったり環境問題に関心が高まってきた昨今、リサイクルやリユース、そしてアップサイクルといった廃棄品の再利用も一般的になってきました。
世論に手助けしてもらう形となりましたが、ようやくお茶染めに賛同いただける企業様と出会い、廃棄処分されてしまうお茶を分けていただくことができたのです。緑茶染めと烏龍茶染めありがたくいただいた緑茶と烏龍茶での染色は今後も引き続き実験を続けて、小紋屋ブログやFacebookInstagramYouTubeなどのSNSで結果を発信していこうと考えています。
そして、お茶のアップサイクル染色に興味のある方のお力になれたら嬉しいです。

染色と付随する工程に関する注意事項 も、あわせてお読みください。

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