烏龍茶でコットン(綿)を染める
茨城県の南西地域で生産されている「さしま茶」。
その製茶会社である のむらの茶園(野村産業株式会社) 様より、商品にならずに廃棄処分してしまうという烏龍茶(ウーロン茶)の茶葉を分けていただいたので、いろんな綿素材を染めてみました。
いわゆるアップサイクルです。
ご提供いただいた烏龍茶葉は、製茶過程で生産ラインから外れたもののようで、細かく砕かれた葉身と葉柄が混じっている状態。
準備した繊維は
- 晒し布 18g × 4枚
- 帆布ミニバッグ 69g × 2個
- 無印良品のもったいない糸 40g × 4本
で、すべて綿100%です。
全部で370gなので染料とする烏龍茶は50%の185gと計算しましたが、1パックに188g入っていたので3gオマケ、使い切ることにしました。
今回は、常温の染液でどのくらい染まるのかを実験してみたかったのと、煎茶よりもタンニン含有量が少ない烏龍茶でも濃染処理が必要かを知りたかったので、大豆タンパクの豆乳濃染も試みています。
実験内容
濃染処理
成分無調整豆乳1:水1として、20(濃染液):1(繊維)で6時間浸す
しっかり脱水した後、天日干しをする
染液作り
- 水2リットルを沸騰させてから、茶葉全量を投入後、5分煮出す
- 不織布で茶葉を濾して、烏龍茶液(染液)のみを別鍋に保存
- 4番液までとったところで浴比:20(染液):1(繊維)の7.4リットルになったので煮出し完了
- 染液を常温(40℃以下)程度になるまで冷ます
※染液のpH値をみたら、pH5〜6くらいの若干酸性寄りな中性でした。
染色
- 浴比が 20(染液):1(繊維)となるように、濃染有りと無しの2つの鍋に染液を分ける
- 染める繊維を水に浸して、十分に浸潤させてから良く絞って広げておく
- それぞれの染液に繊維各種を投入し、最初の5分は繊維をしっかり揉み込む
- 常に染液中に繊維全体が浸っている状態をキープしつつ、時々撹拌しながら染める
- 30分経過したら繊維を取りだして絞り、軽く水洗いをする
媒染
- アルミ媒染(焼きみょうばん):繊維量に対して10%
- 鉄媒染(酢酸鉄):繊維量に対して5%
※染液に含まれるタンニンと媒染液が反応した際、皮膚のタンパク質が反応して色素が沈着してしまいます。必ずビニール手袋をして作業してください。
- 浴比は 20(媒染液):1(繊維)で、媒染時間は15分
- 媒染液から取り出したら、水に色が出なくなるまでしっかり水洗いをする
- しっかり脱水してから日陰干しをする
※今回は2度染めはしていません。
染色結果
まずはアルミ媒染から。
写真では少し色がくすんでしまいましたが、豆乳で濃染した繊維はサーモンピンクに仕上がりました。
梅の枝で染めたときに近い色合いに染まってビックリです。
半発酵茶である烏龍茶は酸化が進んでいるので、こんな赤みの強い色合いになったのでしょうか。
これはいつもの煎茶染め(日本茶染め)では絶対に出ない色なので、新しい発見にワクワクしてきました。
濃染無しでも優しいベージュピンクといった感じになり、色素が入りやすい手紡ぎ糸であれば濃染無しでも色のバリエーションとして追加できそうです。
※お茶の発酵は、茶葉に含まれるの酵素の働きでカテキン類が酸化することを言います。
そして、鉄媒染。
こちらは、ほぼ煎茶で染めた時と同様です。
水に濡れている時は少し紫がかった灰色でしたが、乾いてみると濃染した繊維が渋めの鈍色に変化。
濃染していないものも、上品なグレーに仕上がったので、こちらも色のバリエーションが増えました。
お茶のタンニンと鉄媒染の相性は本当に良いですね。
今回行った常温での染色ですが、試みようと思った理由は2つあります。
ひとつは、お子様向けの染色ワークショップで安全に体験をしてもらいたいため。
もうひとつは、昨今の光熱費高騰に鑑み、無駄なエネルギーをできるだけ消費しない染色方法を模索していたためです。
烏龍茶という初めて扱う材料ではありましたが、かなり理想的な結果を得ることができました。
定番の煎茶はもちろん、自社製品の紅茶も廃棄品ができたタイミングでお裾分けくださるそうなので、半発酵茶の烏龍茶との違いがあるかどうかの興味深い実験ができるかもしれません。
楽しみにお待ちください。
染色と付随する工程に関する注意事項 も、あわせてお読みください。