続、日本茶(緑茶)を染料として使うための染色実験:2度染め編
前回、媒染剤と濃染を変えた10パターンのお茶染めを試しました。
この後、後媒染をした繊維が完全に乾いてから最初の染液を再利用して染色し、その染まり具合の結果がでましたので報告します。
1度染めと2度染めの違い
画像上部が1度染めた晒し布と糸、下部が染めを重ねた(2度染め)晒し布と糸。
横並びは前回と一緒で、左から鉄、銅、クエン酸、アルミ後媒染、アルミ先媒染。
右端のアルミ先媒染は、染める前にもう一度同じ条件で先媒染してから染めました。
染液の浴比・温度、染色の時間は1度目と同じです。
見てわかるとおり、染色を繰り返した方(写真下部)が全体的に色がくすんで見えます。これを本来の色とする見方もあるのかもしれませんが、個人的にはあまり魅力的な染まり具合とは思えません。
2年前(2018年)、ある染織講座に1年間ほど通っていた際、いつも疑問に思っていた媒染のタイミングについて講師の方々に質問したことがあります。講師の見解は、
薄く染まる染料のときは先媒染のこともあるが、基本的に後媒染で、最後は染色で終わるようにする。
とのことでした。
それまでは「後媒染=最後に媒染をして終わりにする」とばかり思っていたので、そのアドバイスを受けてからは最後に染め重ねてから終わるように変更しました。
しかし、お茶染めに限ったことかもしれませんが、媒染後に染めを重ねると発色が悪くなるのも事実なのです。
もしかすると染料によっては媒染で終わりにした方が良いモノもあるのでは?と思い立ちました。
悩んだあげく、もう一度媒染液に浸けて発色を良くして終わりにしてみようと、さらに媒染液に浸けてみました。
2度染めのあとに媒染液に浸けた結果
画像上部が染めを重ねた(2度染め)晒し布。下部が2度染め晒し布をそれぞれの媒染液に30分浸けたものです。
- 銅と鉄は1度染めと同じくらいに色が鮮やかに復活しているように見えます。
- アルミ媒染で濃染有りの布は、後先どちらも2度染めとの変化が感じられません。2度染めをするとその後に媒染をしても彩度は戻らないようです。
濃染無しの布に至っては、媒染液に浸けている段階で液に色が流れ出ていき、生成りのような薄さになってしまいました。 - クエン酸での媒染は発色が思っていたより弱いので、お茶染めの媒染方法としては不向きだと判断します。
今回の実験で得た結果は、
- 銅媒染、鉄媒染をする場合は、染めで終わるのではなく媒染(後媒染)で終了した方が発色が良い。
- アルミ媒染は先媒染にし、染めで終わりにする。
ということになりました。
補足
媒染で終わりにすると媒染液の臭い(鉄や銅の金属臭)が若干残ってしまうのですが、濃度が薄いので時間が経つと臭いも消えます。風通しの良い日陰で乾燥させると更に良いでしょう。
たくさんのサンプルができたので、この状態から今回実験した繊維を週に1度のペースで洗濯と天日干し(通常の洗濯物として扱いたい)を繰り返してみて、経年変化を報告する予定です。
2022年5月28日追記
染色後、2年経ってからの色の変化です。
当初の予定は何度か洗いをかけて天日干しをするでしたが、2年間、ずっと押し入れに入れっぱなしにしていました。
撮影環境が変わってしまっているので正しい比較にはならないと思いつつ、有言実行ということで掲載します。
左から、
鉄媒染で濃染あり/なし、銅媒染で濃染あり/なし、アルミ後媒染で濃染あり/なし、アルミ先媒染で濃染あり/無し。
※クエン酸を媒染液としたサンプルは、コロナ過初期に布マスク化してしまいました…。
鉄と銅は、完全に色がくすんでしまい、銅媒染は赤みがなくなってアルミ媒染とほぼ見分けがつきません。
それに対して、アルミ媒染は色褪せがほとんど見受けられないように感じます。もしかすると、時間経過とともに色が入るタイプ性質なのでしょうか。
化学的な合成助剤を使えば、もっと確実に色を保つことができることはわかっていますが、できるかぎり気軽にお茶染めを楽しめるようにしたいのです。
お茶染め、なかなか奥が深いです。
染色と付随する工程に関する注意事項 も、あわせてお読みください。