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茶縞染織/紡ぎ・草木染め・機織り

タンニンの力で茶染めをする

2022.05.28 2022.05.28

約2年ぶりのお茶染めです。
今回は、綿/木綿(コットン)を茶染めする場合の濃染の必要性について実験してみました。

以前ブログにも書いたのですが、木綿などの植物性繊維を染める場合の濃染助剤として「タンニン酸」というものを使うことがあります。
産地やお茶の種類によっても違いますが、一般的な煎茶には「タンニン」成分が13〜15%くらい含まれていて、茶葉を95℃以上の高温で10分以上煮出すことで茶葉に含まれているタンニン成分の95%以上を溶出することができるそうです。

出典:J-STAGE「煎茶の浸出条件と可溶成分との関係

お茶の「タンニン」と「タンニン酸」とは成分的に違うという説もありますが、何がどう違うのか納得できるような文献は今のところ見つかっていません。
しかし、本当に濃染助剤のかわりになるのであれば(染料そのものがお茶なので)染色工程が1つ減ることになり、私としては大助かりです。

ということで、茶葉に含まれているタンニン成分の力を借りて、濃染なしでどのくらい染まるのか、確かめてみました。茶染め

今回は、媒染剤として手軽にできるアルミ媒染の「焼きみょうばん」を使い、濃染有無で比較をするため豆乳濃染も同時に行います。
・濃染有りと無しの2パターン
・先媒染と後媒染の2パターン
の合計4パターンとし、手紡ぎ綿糸での発色の違いを確認してみました。

前回と違う点として、茶葉を不織布袋に入れて煮出すのではなく、直接鍋に入れて染液を取るときに濾す方法としました。

実験内容

濃染処理

成分無調整豆乳1:水1として、20(濃染液):1(繊維)で6時間浸す
しっかり脱水した後、天日干しをする

染色

染料(茶葉):繊維量に対して50%
染料煮出し:水20:茶葉1として、95℃で15分で3番液までとる
染液浴比:20(染液):1(繊維)
80℃〜90℃の高温を保つようにして1回あたり15分煮たあと、そのまま一晩染液に浸けたままにする
一度乾燥させてから、染色を繰り返す

媒染

媒染剤(焼きみょうばん):繊維量に対して10%
媒染液浴比:20(媒染液):1(繊維)
媒染時間:15分
先媒染は染色前、後媒染は染色後にひと晩浸け置きしてから媒染する

染色結果

タンニンの力で茶染めをする左から、濃染無しの先媒染、後媒染。右側が、豆乳濃染の先媒染、後媒染です。
いつもと変わりなく、草木染めでよく見るベージュ系に染まりました。
お茶のポリフェノール系色素が加熱で酸化酵素の働きで茶褐色(テアフラビン類やテアルビジン類)に変化したと想定できます。

濃染の有無では、予想通りに色の濃さがはっきりと出ましたが、濃染しなくても色はしっかりと入りました。
どんな色(濃さ)に染めたいかによって、濃染の有無を臨機応変に使い分けても良さそうです。

また、前回の実験では先媒染、後媒染で彩度に差が出ていたのですが、今回は彩度はほとんど変わりなく感じ、後媒染の方が若干濃いめかな、という程度です。使用する茶葉の産地や鮮度、製茶につかう茶葉の種類によっても成分の含有量が変わるので、媒染の順序はそれほど気にしなくても良いと判断しました。

余談:残液をクエン酸で弱酸性にして染めてみる

2度の染色を行い染液を作ってから丸2日経っていた残液が、どのくらい酸化したのかpH値を調べたところ、意外にもpH7くらいの中性のままだったので、染液を処分する前に遊び心でクエン酸を追加してみました。
紅茶にレモン(=酸)を加えると、色が薄まるのはよく知られていますが、今回の染液も濃い茶褐色から明るい茶色に変化。
残液3リットル弱に対してクエン酸は10g入れて、pH値は5程度の弱酸性です。

その残液を60℃に熱し、手紡ぎ糸を入れて15分染色。
アルミ媒染をしてみたところ、明るいレモンイエローになりました。タンニンの力で茶染めをする一番左がクエン酸を入れた残液で染まった糸。中央が濃染無し、右が豆乳濃染です。
残液かつ濃染無しでこの色に染まるのであれば、新鮮な染液でどのくらい染まるのか期待が高まります。

茶褐色(テアフラビン類やテアルビジン類)だった色素がクエン酸と反応して無色化し、隠れていたポリフェノール系色素のうちの黄色の色素(フラボノール配糖体)が表に出てきた、ということなのかと想像してみたのですが、専門の知識がないので原因についてはお手上げ状態です。
しかし、この色味はとても魅力的なので、お茶染めの定番色として何とかモノにしなければ。

近いうちに新鮮な染液を作り直し、酸性染液での染まり具合や堅牢度のデータを取ってみようと思います。

染色と付随する工程に関する注意事項 も、あわせてお読みください。

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