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茶縞染織/糸紡ぎ・茶染め・手織り

日本茶(緑茶)を染料として使うための染色実験

2020.03.09 2020.03.11

これまでに何度か日本茶染め(お茶染め)を試しましたが、緑色に染めたいという思いが強すぎて気軽に染められるスタンダードな日本茶染めをほとんどしていませんでした。
藍染めの力を借りた緑染めが大成功したのを機に、いったん日本茶の緑染めチャレンジは休止し、媒染の違いや濃染の有無で染色したときの色合いを記録に残しておこうと思います。
試したパターンは媒染方法を以下の5つとし、それぞれ濃染無し/濃染有りで計10パターンです。

  • アルミ先媒染
  • アルミ後媒染
  • 銅後媒染
  • 鉄後媒染
  • クエン酸後媒染

準備するもの

染めるもの

以下の2種類を1セットとし、合わせて20gを10パターン分、合計200g用意。

  • 綿100% 晒し布(蛍光漂白有り、一般に広く流通しているタイプ)34cm×50cm:16g
  • 綿100% 機械紡績糸 16番/2(双糸):4g

染料

  • 茶葉(飲料用乾燥茶葉):200g

濃染剤

  • 成分無調整豆乳(固形成分8%):1000ml
  • 水:1000ml

媒染剤

  • 焼きみょうばん(硫酸アルミニウムカリウム):染める量に対して10% 2g×4セット=8g
  • 浸染用銅液(銅媒染剤):染める量に対して5% 1g×2セット=2g
  • 浸染用鉄液(鉄媒染剤):染める量に対して2% 0.4g×2セット=0.8g
  • クエン酸:染める量に対して5% 1g×2セット=2g

その他

  • 不織布でできたお茶パック袋、または生ゴミ用袋
  • 調理用温度計(100℃以上計れるもの)
  • ステンレス鍋(大小2個)
  • 媒染液用ボウル(ステンレス、ホーロー、プラスチック製)

濃染する

  1. 豆乳と同量の水を加えて、染める繊維の20倍の豆乳液にする。
  2. 濃染有りパターンを試す5セット分の繊維をぬるま湯で湿潤させて絞っておく。
  3. 豆乳液に繊維を入れたら2,3分ほど良く揉んで液を染みこませ、1時間以上浸ける。
  4. 豆乳液は洗い流さずにそのまま絞ってしっかり脱水し、綛の輪の下にも棒を渡して水の入ったペットボトルで重しをする。布の場合はできるかぎりシワを伸ばして干す。

左側が濃染有り、右が濃染無しです。糸はもともと生成り色なので色味に変わりはありませんが、晒し布は豆乳色が加わってうっすらベージュ色になっています。染める前の布と糸

染液をつくる

  1. 染めるものと同量(200g)の茶葉(飲料用乾燥茶葉)を不織布に入れる。
    ※水分を含むと膨らむので、袋に余裕を持たせて小分けしておくと良い。
  2. 鍋に2リットルの水を入れて火にかけ、50℃まで上がったら茶葉を入れる。染液をとる
  3. 80℃を超えないように温度を調整しながら茶葉を15分煮出し、できた染液を別の鍋に移しとる。
  4. これを繰り返し、浴比が「染液30:繊維1」となるように合計6リットル(6000ml)つくる。

先媒染で染色する

先媒染

  1. アルミ先媒染パターン2セット分の焼きみょうばん 4gを熱湯で溶かす。
  2. 浴比を媒染液20:繊維1とし、50℃くらいのお湯の中に溶かしたみょうばん液を入れて媒染液をつくる。
  3. 濃染有り・無しの1セットずつの繊維をぬるま湯で湿潤させてから媒染液に入れる。
  4. 30分浸けたら繊維を取りだして水洗い後に脱水、糸に絡まりがないように解し、布は広げておく。

染色

  1. 2セット分の染液1.2リットルを鍋に入れて火にかけ、50℃まであげる。
  2. 先媒染をした繊維2セットを染液にいれ、80℃を超えないように温度を調整しながら30分染色して火から下ろす。染色中
  3. そのまま一晩おいて冷却し、染液から取り出して水に色が出なくなるまで水洗いする。
  4. 脱水して日陰干しをする。

後媒染で染色する

染色

染色後にそれぞれの媒染液につけるので、残りの8セットはまとめて染色しました。

  1. 8セット分の染液4.8リットルを鍋に入れて火にかけ、50℃まであげる。
  2. ぬるま湯で湿潤させた濃染有り×4セットと濃染無し×4セットを同時に染液にいれ、80℃を超えないように温度を調整しながら30分染めて火から下ろす。
  3. そのまま一晩おいて冷却する。

後媒染

  1. 染液から取り出して水に色が出なくなるまで水洗いして絞っておく。
  2. 浴比を媒染液20:繊維1とし、50℃くらいのお湯の中にそれぞれの媒染剤を入れてよく混ぜておく。
    ※クエン酸は少量の熱湯で溶かしてから。
  3. それぞれの媒染液に濃染有り・無しの1セットずつの繊維を入れる。媒染液に浸ける写真左上から時計回りに、銅、鉄、クエン酸、アルミ。
  4. 30分浸けたら繊維を取りだし、水洗い後に脱水して日陰干しをする。

結果

染め上がりはこちらです。一度染め結果糸のそれぞれ左側は濃染有り、右側が濃染無し。
糸が乗っている布は豆乳で濃染していて、その右隣の布は濃染していません。
左から、

  • 後媒染:鉄
    濃染有りはシルバーグレー、濃染無しでほんのり青紫がかっていてとても美しく染まりました。
  • 後媒染:銅
    濃染有りはオレンジっぽい茶色、濃染無しでサーモンピンクという印象です。
  • 後媒染:クエン酸
    濃染有りでほんのり染まりましたが、一番色が薄いです。濃染無しでは生成り色。
  • 後媒染:焼きみょうばん
    濃染有りでベージュ系。濃染無しではほぼ生成り色。
  • 先媒染:焼きみょうばん
    濃染有りで黄色みのあるベージュ系。濃染無しでも染まっています。

となっています。

銅、鉄、先媒染のアルミは濃染処理をしなくても淡い色合いに染まりました。好みにもよりますが、このような淡い色合いを出そうと思ってもなかなか難しいので、あえて濃染しないという染色もアリな気がします。

また、アルミ媒染をするタイミングの後先で色合いに違いがでました。先媒染の方が濃く彩度が高いようで、個人的には先媒染の色合いが好みです。
媒染は発色を良くするとともに色落ちを防ぐことが重要ですので、今後の経年変化による退色によって媒染のタイミングを考えようと思います。

そして、草木染めでは媒染したあとにもう一度染液で染めて、染色で終わりにすることが良いとされているので、このあとに媒染剤ごとに染色をして最終的な染め上がりを確かめようと思います。

→2020/3/11 追記「続、日本茶(緑茶)を染料として使うための実験:2度染め編

染色と付随する工程に関する注意事項 も、あわせてお読みください。

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