合成濃染剤と豆乳濃染の違いを見る
植物性の繊維を染色するときには、ほとんどのケースで濃染という作業をします。
豆乳濃染でそれなりの成果を得ていたため市販されている合成の濃染剤は使ったことがありませんでしたが、試しに豆乳濃染とどのくらいの違いが出るのかを知っておきたく、購入してみました。
商品パッケージに書いてある使用法は、
水1リットルに対して5〜10%の割合で加えます。
温度50〜60℃で20〜30分間撹拌しながら処理したあと水洗いして終了です。
となっています。
濃染液を常に50〜60℃を保つのか、繊維を入れるときに50〜60℃であれば良いのか悩みつつ、まずは後者のパターンを選択することにし、豆乳濃染との発色の違いを実験します。
染料は前回同様、飲料用の乾燥緑茶葉。
媒染方法は以下の3つとし、それぞれ豆乳濃染/カラーアップでの濃染で計6パターンを試しました。
- アルミ後媒染
- 銅後媒染
- 鉄後媒染
準備するもの
染めるもの
以下の2種類を1セットとし、合わせて20gを6パターン分、合計120g用意。
- 綿100% 晒し布(蛍光漂白有り、一般に広く流通しているタイプ)34cm×50cm:16g
- 綿100% 機械紡績糸 16番/2(双糸):4g
染料
- 茶葉(飲料用乾燥茶葉):120g
豆乳濃染:染めるもの60gに対して
- 成分無調整豆乳(固形成分8%):600ml
- 水:600ml
カラーアップ濃染:染めるもの60gに対して
- 濃染剤カラーアップZB:6cc(=水1200mlの5%=繊維の重量の10%)
- 水:1200ml(浴比 繊維:水=1:20)
媒染剤
- 焼きみょうばん(硫酸アルミニウムカリウム):染めるものに対して10% 2g×2セット=4g
- 浸染用銅液(銅媒染剤):染めるものに対して5% 1g×2セット=2g
- 浸染用鉄液(鉄媒染剤):染めるものに対して2% 0.4g×2セット=0.8g
その他
- 不織布でできたお茶パック袋、または生ゴミ用袋
- 調理用温度計(100℃以上計れるもの)
- ステンレス鍋(大小2個)
- 媒染液用ボウル(ステンレス、ホーロー、プラスチック製)
カラーアップで濃染する
ここでは、今回の染色実験での手順を説明します。
※豆乳での濃染は、こちらの記事をご参照ください。
- カラーアップ濃染パターンを試す3セット分の繊維をぬるま湯で湿潤させて絞っておく。
- 60℃のお湯にカラーアップ液剤を加えて混ぜ合わせ、繊維を濃染液に泳がせるようにしながら30分浸ける。
- 濃染液から取り出してよく洗って脱水する。
◎染液の作り方、染色、媒染の手順は「日本茶(緑茶)を染料として使うための実験」と同じです。
結果
染め上がりはこちらです。左から
- カラーアップ濃染:鉄媒染
- 豆乳濃染:鉄媒染
- カラーアップ濃染:銅媒染
- 豆乳濃染:銅媒染
- カラーアップ濃染:アルミ媒染
- 豆乳濃染:アルミ媒染
※参考として、長襦袢の端布(絹)をお茶染めたものを写真下側に置きました。
(絹は未濃染で、左から鉄、銅、アルミ媒染)
豆乳濃染と並べてみると、カラーアップの方が茶色を含み、彩度が下がったように感じます。
色の好みはありますが、市販の合成濃染剤は手間がかからなくてありがたい存在です。これまでの豆乳濃染とともに、必要に応じて使ってみようと思います。
補足
アルミ媒染は後媒染だったのですが、どちらも媒染液に色が流れ出てしまい淡い色合いになりました。お茶染めでのアルミ媒染は先媒染の方が良いのかもしれません。
染色と付随する工程に関する注意事項 も、あわせてお読みください。