日本茶(緑茶)染め:強アルカリで色素抽出を試す
日本茶(緑茶)で染色をしていると「きれいな緑に染まりそう」と思われがちですが、実際には淡い黄色や茶色っぽいベージュになってしまいます。
ざっくり説明すると、
緑茶の主な色素:クロロフィル、カロテノイド、フラボノイド(カテキン、アントシアン含む)など。
ただし、クロロフィルは脂溶性であるため、水に溶けない性質を持っている。
であるため、煎茶やお抹茶などが緑色をしているのは茶葉の粉末がお湯の中に浮遊(懸濁:けんだく、といいます)しているだけで、緑の色素が溶け出しているわけではないのです。
ということは?
葉緑素を抽出できれば日本茶でも緑色に染められる?
そう単純に思って、染色家の山崎青樹さんが発見した若葉の緑染めを参考にしたら茶葉から葉緑素を抽出できるのではないかと、これまでに何度か日本茶での染色をしてきました。
しかし、乾燥茶葉はもちろん、新茶の季節に生の若葉を摘んで染色してみてもうまくいきません。
緑染めが可能な植物と不可能な植物があるということなので、おそらくお茶の葉は不可能な分類なのだろうと諦めていました。
ところが先日、私が日本茶で染色をしていることを知った友人から賞味期限切れのお茶を大量にいただきまして、「お茶」というくらいなのだから「茶」色の糸を作ればいいだろう、と開き直りつつ染液を作っていたのです。
3液取ったところで思い立ち、炭酸カリウムを入れて染液を強アルカリ(pH12くらい)にしてみました。最初は写真の一番左側のような赤茶色だった染液が、煮出しを繰り返すごとにどんどん緑色に変化していきます。炭酸カリウムを入れてから6液目が一番濃い緑色に感じます。普通の染液を含めトータルで12液くらいとりました。(のちに水道代とガス代の請求書を見て、冷や汗が出ました…)
偶然か必然か、乾燥茶葉からの緑色素の抽出に成功です。
安定して緑染めができるようになったら、染液抽出方法と染色の手順を投稿しようと思います。(基本の工程は山崎青樹さんの「若葉の緑染め」と一緒です)
染色データ(2020年2月:追記しました)
用意するもの
- 機械紡績の綿糸(10/2番手) 計400g
- 日本茶(乾燥緑茶葉) 計400g
- 不織布でできたお茶パックや生ゴミ用袋 数枚
- 媒染剤(糸の重さに対して) 焼きミョウバン5%、酢酸銅5%、酢酸鉄2.5%
- 炭酸カリウム 160g(20g×8回分)
- クエン酸 適量(pHを見ながら投入したので総グラム不明)
染液をつくる
- 茶葉を不織布に小分けしておく。
- 2リットルの水が入った鍋に茶葉を入れて染液を作る。煮出し時間は90℃前後で15分。
- 煮出した染液を別の鍋に移し替え、2.の工程をあと2回繰り返す。(通常の煮出し染液は3液まで)
- 4液目からは、2リットルの水が入った鍋に炭酸カリウムを入れて染液を作る(アルカリ1液)。煮出し時間は90℃前後で15分。
- アルカリ5液〜アルカリ7液(緑が濃い液のみ)計5リットルにクエン酸を入れて中和(pH7)する。
染色(緑染め)
- クエン酸で中和したアルカリ染液を鍋に入れ、精練・濃染済みの糸を湿潤させてから染液に投入、90℃を超えないように染色する。
- 30分染めたら、そのまま染液が冷めるまで(できれば一晩)おく。
- 染液から糸を取り出し水洗い後、酢酸銅で30分媒染。
- 媒染液から取り出し水洗い後、脱水して日陰干し。
- 1.の液を使い、同じ工程で2度染めする。水洗い→脱水→日陰干し。
結果
写真左から、
- アルカリ抽出5液〜7液で染色→銅媒染
- アルカリ抽出1液〜4液で染色→銅媒染
- 通常染液で染色→アルミ媒染
- 通常染液で染色→銅媒染
- 通常染液で染色→鉄媒染
一番左が緑染めの糸です。染液自体は濃いめの緑でしたが、染めてみるとかなり淡い色で染まりました。
全体的に染めムラもあり、思っていたような染め上がりにはならず、ちょっと残念です。
補足
その後、何回かアルカリ抽出での染色を試みましたが、退色が激しくまったく色が定着しなかったため、日本茶はアルカリ抽出での緑染めには向かないと判断しました。
染色と付随する工程に関する注意事項 も、あわせてお読みください。