草木染めの経年変化について
媒染や濃染の違いで染まり具合に変化がでる草木染めですが、一番難しいのは染めた色合いをそのまま残すことだと感じています。
サンプルになりそうな写真と作品が手元にいくつか残っていたので、これまで染めた手紡ぎ綿糸と市販の綿糸で製作した作品の「織り上がり直後」と「現在の状態」を比べてみました。
桜染め
染色した時期:2015年4月 染めの手順はこちら。
左が織り上がり直後の2015年4月、右が2020年3月の状態。撮影環境が違うので色合いに差が出たのかと思ったのですが、織り上がり直後は確かに左側のような淡い色合いでした。
しかし、久々にクローゼットから出してみたら、右側のように全体的に色が濃くなっていてびっくりです。パウダーピンクの淡い色合いからサーモンピンクのような色合いへ変化していました。
2、3回着用して洗濯は1度しかしていないと思います。
桜染めでは染液の段階で熟成させて濃い色にするらしいので、染めた後も熟成されて色が濃くなることがあるのでしょうか。
ローズマリー染め
染色した時期:2015年10月 染めの手順はこちら。
アルカリ環境で色を出した緑の染液で染め、銅媒染した糸で作ったマフラーです。
左が織り上がり直後(2015年10月)に一度洗いをかけたもの、右が2020年3月の状態。
緯糸に緑の手紡ぎ糸を使っているのですが、緑色が抜けて淡いベージュになってしまいました。
何度か着用し、2回くらいは洗濯したと思います。
ハーブ(生葉)での染色では他にバジルとミントで試したことがありますが、どちらもアルミ媒染で淡いベージュに染まり、その後は1年もしないうちに生成り色に戻りました。生葉でのハーブ染めでは色を保つのは難しそうです。
お茶染め(飲料用の乾燥緑茶葉)
染色した時期:2015年〜2017月にかけて 織った時期:2018年5月
上の2つが織り上がり直後、下の2つが2020年3月の状態です。
経糸はアルカリ環境で色素抽出、アルコールで色素抽出など、様々な手法でお茶染めした手紡ぎ糸だけを使いました。緯糸は右が和綿の手紡ぎ糸で左が茶綿の手紡ぎ糸、どちらも天然そのままの色です。
全体的に経糸の色が薄くなっていますが、著しく退色したような印象はありません。左の茶綿を使ったマフラーの現在が赤っぽく見えるのは、紫外線に反応して色が濃くなるという茶綿の性質からくるものと思われます。
ただ、アルコールで緑染めをした糸の部分は、残念ながら緑色が抜けてしまいました。
写真上の方の濃いグレーの両サイドに緑の糸を使っていて、左の画像(2018年5月撮影)ではほんのりカーキっぽい色合いに見えるのですが、右側の現在の画像ではベージュに変化しています。お茶染め手紡ぎ糸で織った2枚は日常使いをしており、洗濯もそれぞれ10回以上はしました。他の衣類と一緒に洗濯機で洗い、屋外で天日干しをしていることを考えると、お茶染めの色素定着はかなり優秀な方だと思います。
緑染めした糸は色をキープすることは難しいけれど、緑以外の色は媒染をしっかり行うことで退色を軽減できそうです。