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茶縞染織/糸紡ぎ・茶染め・手織り

Z撚りとS撚りについて

2023.06.13 2023.07.31

綿(わた)から手紡ぎをする時、私は基本的にZ撚り(左撚り)で紡ぎます。
綿の手紡ぎ糸を使った某機織り団体の講座を受けていた際に、「綿の手紡ぎ糸はZ撚りです!」と宣言されてしまったので、あまり理由を深く考えずにZ撚りを続けてきました。
しかし、最近になってS撚りでの紡ぎを推奨している個人や団体があることを知り、なんとなくモヤモヤっとした気持ちが生じてしまい…。

Z撚りとS撚りについてネットや文献で調べてみたところ、ようやくスッキリする理由を発見できたので、一通り情報を整理します。

まず、なぜ、綿を紡績(手紡ぎ含む)するのにZ撚りが良いのか。

東大阪繊維研究所ブログ「基本中の基本をもう一度。撚糸方向と斜行の関係。」

左撚りが順撚りと呼ばれるもともとの理由には諸説ありますが、私が教わったのは綿花のワタそのものが左巻きにカールしていることに由来するというものです。

コットンの原料となるワタをほぐしていくと一本の繊維(ステープル)になります。その繊維は真っ直ぐではなく多少カールしたりよじれたりしていて、その天然のよじれ方向が左巻きになっているから、糸として紡績するときに左撚りに捻っていくとスムーズに紡績できるというのがその理由です。

最初に左撚りをベースに機械が造られたので、それ以降ウールを紡績する機械もリネンを紡績する機械も左撚りに糸を撚糸していく構造で作られるようになったということです。
https://www.eppyarn.co.jp/hofi/blog/archives/61

コットンの繊維が左撚りだったなんて、初めて知りました!
これで、どちらかというと綿に向いている撚り方向はZ撚り(左撚り)である、という明確な理由付けができます。

また、上記ブログ記事の転載許可をお願いしたところ、貴重な資料もご紹介いただきました。
http://kan5.sakura.ne.jp/konwa/KuramaeHandout/kohyama.pdf

PDF6ページ目の写真を見ると、確かにコットンの繊維が左撚りになっています。

だからといって、S撚りを否定する気持ちは全くありません。
機械での紡績では繊維自体の撚りが影響するとしても、手紡ぎでS撚りがし難かった、なんて感じたことは1度もないのですから。

ただ、たくさんの糸を紡いでから作品にしようと思った時に、糸の撚りが逆で使えない、という悲劇が起こる可能性もあります。
何を作るために糸を紡ぐのか、きちんと考えてから撚りの方向を見極めることが重要です。

しかし、手回しの糸車であれば調べ糸(早糸・早緒)の向きを変えたり、足踏み糸車であればホイール(車輪・はずみ車)の回転方向を変えるだけなので簡単に撚りの向きを変えることができるのですが、スピンドルの場合は一度身についたクセがなかなか抜けず、撚り方向を矯正するのは一苦労なんですよね。

一番良いのは、S撚りもZ撚りもスムーズに紡げることですけれど…。
こればかりは精進するしかありません。Z撚りとS撚りについて※画像内の「時計回り」とは、スピンドル本体の動く方向のことです。

では、羊毛紡ぎをする人にS撚りが多いのは何故でしょう。
腑に落ちた答えはこちら。

株式会社ラ・メール「S撚り?Z撚り?」

ホームスパンのように、手紡ぎ/手織りをする場合は、 基本、S撚りの糸を使います。
(シンプルな布の場合)
なぜかと言えば、糸をかせあげする時、木枠に巻く時、整経する時・・・ 全て時計回りに巻きます。
反対回しにすると、糸の撚りがほどけてきてしまいます。
なので、時計回り-S撚りの糸を使います。
編み物の場合は、 棒針り編み(アメリカ式/フランス式)、かぎ針編み等・・・ 針に糸をかける方向によって S撚りの糸がいいかZ撚りの糸がいいか違ってきます。
https://www.lamerr.com/blog/dyeing-weaving/s撚り?z撚り?/

ちょっと混乱したので整理します。
糸を扱う道具は基本的に時計回り(右回り)で動かすので、その道具に掛けられた糸には反時計回りに力が働くため、Z撚りの糸では撚りが解けやすい、ということですね。
ホームスパンの場合は単糸のまま織りに進むことが多いようで、最初からS撚りの単糸を紡ぐという理由がわかりました。

ただ、私の感覚(綿の手紡ぎ)では、Z撚りの糸を右回り道具で扱っている時に不都合が全く感じられなかったので、ある程度しっかりと撚った糸であればそこまで気にしなくても良いのかもしれません。Z撚りとS撚りについて※画像内の「反時計回り」とは、スピンドル本体の動く方向のことです。

次に、ホームスパン用の羊毛紡ぎ糸ではなく、一般的に販売されている編み物用の毛糸ではどうでしょう。
こちらが参考になります。

Kitto AMERU(キットアメル)「撚糸とは?糸の撚り方の種類(SZ撚り・甘撚り・強撚・意匠撚糸など)」

紡績の工程「精紡」で作られる単糸は、基本的にすべてZ(左)撚りです。
(単糸=1本のみで出来た糸、双糸=2本で出来た糸)
デメリットは片面組織のメリヤス編みの場合は斜行しやすいこと。
(*斜行とは編み上がりが斜めに歪むこと)
両面組織のゴム編み、ガーター編み、もしくはかぎ針編みなら斜行は出ません。

一般的な毛糸はS撚りがほとんどです。
Z撚りで単糸にしたあと、2本の糸を撚り合わせた糸(双糸)にします。単糸のときとは逆にS(右)撚りにします。
撚りが両方から入る双糸になる事で、糸が安定して斜行しづらくなります。
このため、単面組織のメリヤス編みで編んでも斜行しません。
https://rouranca.com/twisted-yarn#toc4

やはり、編み物の毛糸も最初は単糸でZ撚りに紡績し、双糸でS撚りにするようです。

最後に補足で、手縫い糸とミシン糸の違いについて。

株式会社フジックス「糸の撚り(より)」

手縫糸とミシン糸の見分け方は縫い糸にかかっている「(上)撚りの方向の違い」ですので、糸にかかっている撚り(より)の方向を確認します。
通常、手縫糸は右撚り(S撚り)、ミシン糸は左撚り(Z撚り)になっています。

手縫いでもミシン縫いでも縫製をしているうちに縫い糸には自然に撚りがかかります。縫製時に、糸の撚りと逆方向に撚りがかかると縫い糸の撚りが戻り、ミシンでは糸切れや目飛び、手縫いではちりつきやもつれの原因となってしまうため、フジックスでは縫製時に撚りが戻らないように、手縫糸とミシン糸では撚りの方向を変える工夫しています。
ですので手縫いの時には手縫糸、ミシン縫いの時にはミシン糸というように、用途に合った糸を選びましょう。
https://www.fjx.co.jp/learn/knowledge02.html

なるほど。
布の色に合う手縫い糸がない時にミシン糸で手縫いをすると、少し縫いにくかった疑問が解決しました。

以上、長くなりましたが、結論です。

最終的に「どんな糸で何を作るのか」をはっきりさせてから糸を紡げば良い、ということ。
S撚りでもZ撚りでも、自分で撚りのルールを決めて気持ちよいと感じる紡ぎをすれば良い、ということ。

です。

楽しい手紡ぎライフをお過ごしください。

追記:

あくまでも私が入手した情報と見解ですので、腑に落ちない点や違うご意見もあるかと思います。
その場合は、メールフォームより直接ご意見ください。
私の目の届かないところで欠席裁判されてしまうと、とても悲しいです。

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