緑茶(日本茶)でモスグリーンに染める:多段階媒染
以前、緑茶の染液を同時媒染(同浴媒染)して、コットン繊維を鮮やかな黄色に染る方法を紹介しました。
今回は、黄色に染まったハンドタオルを鉄媒染液に浸して、ほんのりと緑色のモスグリーンに染め変えてみます。
鉄媒染剤をお持ちの方は、金属イオンの不思議な効果をお試しください。
用意するもの
- 同時媒染したハンドタオル
- 酢酸鉄溶液 適量(今回は木酢酸鉄溶液を使用)
- スポイト 容量3ml(1滴 0.5ml)
- 染色桶
- 木べら/トング
- ゴム手袋
媒染する
鉄媒染液をつくる
- 染色桶に4Lの水を入れる
- 鉄媒染液をスポイトに吸わせ、そこから5滴(2〜3mlくらい)染色桶に溜めた水に垂らして撹拌する
※スポイト1滴は、0.5mlとする
媒染する
媒染剤で発色させたハンドタオルを別の媒染剤に浸け、更に発色を変える「多段階媒染」をします。
- 焼みょうばん(硫酸アルミニウムカリウム)での同時媒染で黄色に染まったハンドタオルを、湿潤させてから鉄媒染液に入れる
※ゴム手袋を着用して作業すること - 最初の1〜2分は繊維の奥まで液が染み込むようにしっかり揉み込みながら色の変化を見る
- 10分ほど経過しても色の変化がないようであれば、いったんハンドタオルを引き上げて絞り、別の容器に仮置きする
- 媒染液に更に数滴の鉄媒染剤を追加して良く撹拌する
※繊維の素材や量によって鉄媒染剤の量がかわるため、自分の目で確認しながら行うこと - ハンドタオルを媒染液に戻し入れ、揉み込みながら色の反応を見る
※希望の色になるまで3.〜5.を繰り返す - ハンドタオルがモスグリーンに変化したら媒染液から引き上げて、水に色が出なくなるまでしっかりすすいで脱水する
- 日陰干しで乾燥させる。
キレイなモスグリーンに染めるためのポイント!
使用する鉄媒染剤はごくわずかなので、少しずつ濃度を上げながら色の変化を見極めましょう。
乾いたあとの繊維がくすんでしまったら、緑茶の染液(焼みょうばんの同時媒染)でもう一度上染めをすることで色に鮮やかさが戻ることがあります。
どうしてモスグリーンに変化するの?
最後に、少し専門的な話になりますが、簡単に色の変化について解説します。
私は化学的な知識を全く持ち合わせていないため、AI(ChatGPT)に協力を得ながらまとめた素人の推論です。
その点、お承知置きください。
1. 焼ミョウバンによる同時媒染
焼ミョウバン(硫酸アルミニウムカリウム)は、カテキン類やフラボノイド類のフェノール基と錯体を作ると、黄色系の明るい色調を示します。
特に緑茶に含まれるカテキンは、フェノール性が高いため金属と結びつきやすいと言われています。
2. 鉄媒染による変化
さらに、鉄媒染液に繊維を漬けることで、以下の2つの作用が起こります。
① 金属イオンの置換反応
硫酸アルミニウムカリウムよりも鉄媒染液の方が錯体形成力が強いため、繊維上のアルミニウム錯体の一部が鉄錯体に置き換わります。
結果として、色が黄色 → モスグリーン(緑褐色)に変化しました。
② 鉄媒染液での酸化反応の促進
鉄成分が酸化剤としても働き、カテキン類が部分的に酸化されて色が濃くなります。
ただし、ごく薄い鉄媒染液を使ったため、酸化が抑えられ柔らかいモスグリーンで止まったと考えられます。
以上、ご参考まで。
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