手紡ぎ糸の撚りどめと精練
2020.03.05
2020.03.05
綿(コットン)から手紡ぎして糸にしたあとは、必ず「撚りどめ」という作業を行います。
これをしないと、糸がクルクルと撚れてしまって扱いづらいし、繊維同士が密着していないので撚りが戻って切れやすくなってしまいます。
また、植物性の綿にも若干の油分があるため、そのまま染色しようと思っても水分を弾いてしまってきれいに染まりません。油分とともに、見た目はわからないホコリやゴミを除去する「精練」も同時に作業します。
撚りどめ
昔は「つむ」と呼ばれる紡錘(スピンドル)に稲わら(ストロー)を差し込んで芯を作ってから糸を紡ぎ、「つむ」から稲わらごと引き抜いたそのまま状態で撚りどめをしていました。
しかし近年では「つむ」のサイズに合う稲わらを入手するのも難しいですし、タクリのように鉤がついたハンドスピンドルでは芯を差し込むこともできないので、綛あげをしてから撚りどめをする方法が一般的になっています。
手順
- 綛に取った手紡ぎ糸は、撚りが戻らない程度にネジってまとめておきます。
(この写真の糸はかなり強めの撚りをかけたので、いつもより堅めに捻ってあります)
- 撚りどめをする糸の20倍の水が入った鍋に綛を入れコンロに火をかけます。木べらやトングなどを使って水中に沈ませてください。
- 綛が水中に沈むようになったら、そのまま5分ほど煮て綛を取り出します。
- 取り出した綛は水に浸けて冷やしながらネジりをほどき、脱水します。
※お湯から出しだ直後は綛(特に糸が重なっている部分)がとても高温になっているのでご注意ください。 - 撚りどめをした綛を広げてひとまとめにし、輪の2ヶ所くらいを糸で束ねておきます。
(↑手紡ぎ糸での写真を取り忘れたので、機械紡績糸で代用しました。後日差し替えます…)
精練
続いて精練に入ります。
用意するもの:精練するものが100gと仮定
- 重曹または中性洗剤 5g(精練するものに対して5%)
- 水(お湯) 2000〜3000ml(精練するものに対して20〜30倍)
手順
- ステンレス鍋に水を入れ(撚りどめのお湯に水を追加して再利用してもOK)、沸騰する前に重曹または中性洗剤を投入して撹拌。溶けたことを確認したら精練する糸を入れます。
- 沸騰したら15分ほど弱火で煮ます。
- 汚れが取れたら鍋から取り出し、ぬめりが取れるまで良く水洗いをします。
- 脱水し、天日干しで乾燥させます。天日干しのときに、綛の輪の下にも棒を渡して水の入ったペットボトルで重しをすると、糸がまっすぐになって撚りどめ効果が増します。
こちらは参考までに、原綿を精練したときの写真です。
一見、真っ白な綿ですが、実はこんなに汚れています。
補足
- 綿(コットン)の場合は重曹の代わりに中性洗剤を使う方が一般的ですが、最初に染めの講習を受けたときに重曹を使ったため、私は重曹での精練をしています。
- お湯が沸騰してから重曹や洗剤を入れると急に泡立ち、鍋から溢れて大変危険です。大きめの鍋を使うようにし、水の量も鍋の8分目を超えないように留意してください。
- 重曹を使った場合「繊維がアルカリ性のまま染色をすると染めムラになるかも」と心配な方は、水洗いの締めに少量のお酢(繊維100gに対して大さじ1杯くらい)で浸け置きリンスで中和してください。
5%の重曹であればpH値は中性としても良いレベルなので、私はリンスはしません。 - 精練した糸や布を染めるときは、染色直前に人肌程度のぬるま湯に浸ける(湿潤といいます)ことを忘れずに。
染色と付随する工程に関する注意事項 も、あわせてお読みください。